アクセス解析で宿泊者減の原因を究明できているのか

Web担当者フォーラム「Macの壁紙「青い池」で美瑛町の観光客数は増加、一方で宿泊客数は減少。その原因をウェブ解析で探る」2017.10.13

「宿泊客数の減少」への考察に関して、なかなか興味深く読んだのだけど、結構もやもやとする。
後半の「ウェブ解析から観光客数を推計」以降は、解析と実観光客数との関係を探るという宿泊客数の減少への考察とは別記事といえるような内容なので割愛して、宿泊者数の減少についてのもやもやのポイント。

前半のまとめとして

丘の農業景観に癒やしをもとめて訪れていた中高年層は、青い池ブームで観光客が激増し、ゆったりとした時間を過ごすことができなくなった美瑛町の実情に幻滅し、離れていったことがデータから推察できます

という推察をしているのだけど、これに対する違和感が大きい。もちろん、記事になっていない部分の計測も含めての推測だろうと思うので、考察自体を否定するものではないのだけど。

なので違和感の中身をかんがえてみた。
1つ目は揚げ足取りかもしれないが、「ゆったりとした時間を過ごすことができなくなった美瑛町の実情に幻滅し」に対して「幻滅」を根拠にするのはどうなんだろうか、という点。観光客が多い→駐車場の確保にも一苦労・渋滞もひどい→結ったりはしていない、まではよしとしても、それ故に「幻滅した」とは言えないのではないだろうか。
とはいうものの、これはレポートではなくて、記事としての修飾として見れば、許容かもしれない。

もう1つの違和感。中高年層は果たして本当に宿泊しなくなっているのか。

  • 直前のデータから「中高年層が離れて、若年層が増加」という事実は読み取れる
  • この傾向が生じる境目に「Macの壁紙になった/TVに採り上げられた」というトリガーがある
  • サイト閲覧者は「青い池」関連の情報のみにアクセスしている傾向も読み取れる

∴ 2016年時点で中高年層が離れていった
という構造になっているが、
> 直前のデータから「中高年層が離れて、若年層が増加」という事実は読み取れる
で考察しているのが、サイトへの訪問者の構成比。実数を考慮していないように思われる。
構成比が、2014年にテレビに採り上げられる=観光客が増える)前後の比較として提示されているので、2014年の構成比とあるが、おそらくその前のグラフ(2012年/2016年の訪問者数比)の2012年の構成も同等であろう、として実数を推計。

  1. 構成比は
    2014 2016
    25〜34歳 20%超 30%超
    55〜64歳 20% 10%弱
    65+ 13%程度 5%程度
  2. 記事中のページ別訪問数の上位のキャプチャ中のサイト全体のPVが2,774,396
  3. 記事中に平均PV/Sessionが3とあるので、大雑把に900,000訪問者が2016の数字と考える
  4. 記事中のユーザー数のところで、「それ以前と比べて2.6倍に増加」とあるので、増加前の訪問者を900,000/2.6 = 346,153なので35万とする

という条件(構成比の〜%超とかは丸めて〜%とする)で計算すると、

2014 2016 増減
25〜34歳 35万x20% = 7万 90万x30% = 27万 +20万
55〜64歳 35万x20% = 7万 90万x10% = 9万 +2万

65+ 35万x13% = 4.55万 90万 x 5% -0.05万

55〜64歳のサイト閲覧者は決して減少していない(厳密な比率だと、10%を切っているので、横倍程度?)。65+も2014年を13%という読み取りに誤差があるにしても-0.05万=500人なので、横倍に近い。
と考えると、
「ゆったりとした時間を過ごすことができなくなった美瑛町の実情に幻滅し、離れていった」中高年層はサイトに存在しておらず、単に2016年のサイト訪問者の増加を若年層が担っているにすぎない。

見えている数字のみ、およびグラフの読みとり誤差がある、というような曖昧な条件での突っ込みなので、否定するにはデータが足りていない感はあるが、すくなくとも、記事で取り上げられた条件だけでは、宿泊客数の減少(250.5万→247.5万: -3万)の根拠としては弱すぎるように思える。
すくなくとも、2014年以前(よりは青い池の影響が少ない2012年以前)の数年のサイトのアクセス状況、宿泊客数の変動の比較で、実数ではなく、サイト訪問者の構成比における中高年層の比率が、宿泊客数の変数となっている、という検証が必要なのではなかろうか。