生産性について考えてみる

先日の電通過労死事件に関して、同社が月間労働時間の上限を5時間引き下げ、最長法定外労働時間を45時間(所定外月間65時間)とする旨、10月17日に石井直社長が社員向けにメッセージを送ったとYahoo Newsに記載があった(BuzzFeed Japanが文面を入手とのこと)

Yahoo News

BuzzFeed

上記ページに「原文ママ」として記載されている改善方針は以下。


  1. 現時点で違法であることが指摘されている現状を改善するため、「三六協定」の管理を、現行の年次管理・月次管理に加えて、日次でも管理することとする。この日次管理は、本日より実施する。
  2. 現行では、最長で法定外月間50時間(所定外月間70時間)を上限に設定している三六協定の上限を、現行の労使協定の改定に合意するまで、最長で法定外月間45時間(所定外月間65時間)に引き下げる運用を開始する。

    本運用は、11月1日から正式に開始するが、本方針は、本日付で全てのマネジメント職に対して通達し、本日より、可能な範囲で10月中の対応も図ることとする。

  3. 労働基準監督官からの指摘を踏まえ、「自己啓発」「私的情報収集」による私事在館を禁止とする。業務上必要なこれらの活動は、業務命令を受けたうえで、勤務登録する。
  4. 現行の労使協定の改定に合意するまでの間、現在、最長50時間と設定している特別条項の上限を30時間に引き下げる運用を開始する。本運用は、11月1日から正式に開始する。
  5. 2016年4月に当社に新卒入社した社員については、2016年11月と12月において、特別条項の適用を認めない。
  6. 上記方針は、本日よりその実現に向けた取り組みを開始する共に、引き続き、当社労働組合との間で締結する協定内容の変更に向けた労働組合との協議を重ねる。

私事在館の禁止、法定外労働時間を50時間から45時間への短縮、三六協定に基づく合意内容を労使で見直しを行う、というのがおおきな柱か。

BuzzFeedによれば、従前の働き方は当局を含むステークホルダーの理解は得られない、ということであるのだけど、改善として示された内容は基本的には「時間」を縮めよう、ということのみ。月間5時間の短縮ということは、休日出勤なしで平日のみで考えれば1日2時間30分の残業が、2時間15分までになったに過ぎないし、そもそも50時間が守られていなかった(常態で100時間とかだったんでしょ)という点についてどう考えているのか、というのはちょっと気になるのだけど、それ以上に時間の短縮の大号令だけだと、「時間は短く、業務量は変わらない」という状態が生まれるのではないかという点が気になる。

つまり言い方を変えると、社員全員の「生産性を高めろ」という事になるのではないかと。クライアント(加えて社内の上司とか)の無理な注文(就業間際に明日までに資料よろしく、とか)に対応すべきか、断るべきか、というような部分でどのように考えてゆくのだろうか。

電通に限らずに、「クライアントに言われたら無理してでも応える」としてきた企業文化の蓄積が、「(無理と自覚せずに)無理な注文をしてしまうクライアント」を育ててきてしまったのではないか。その結果が過労ということであるのなら、無理な依頼は無理と断るのが当たり前、という文化をクライアント側が納得するような形で実現しないといけないのでは。

生産性を高めるという音頭のもとに、一人あたりが抱える案件量が増えるというような会社を見たことがあるが、これも量をこなせば売上が上がるから生産性が上がっているように見えるというだけであって、単位時間あたりの効率化なんてことは眼中にない(もしくは個々人が勝手に効率化を考えろ)ということになる。業務の見える化なんてことも言われるけど、複数案件を抱えている場合、どの仕事でどのような負荷が掛かっているのか、過負荷になっている時にそれを調整する機能が会社にあるのか、というようなことまで含めて考えないといけない問題のように思える。

仕事の価格について

仕事でおつきあいのあるクライアントさんの個人ブログのカスタマイズについて相談される。もちろんそれだけ技能があるということで評価をもらったということで相談されることは悦ばしい。

なのだけど、問題は価格。こちらに相談したいこと(やって欲しいこと、おしえてほしいこと)の量を見積もると、1日で済む量ではない。テンプレートのカスタマイズは、元のテンプレートのソースを読まねばならないし、ちょっとした文字サイズを変更するだけであっても当該styleの影響範囲だって調べねばならない。他への影響など無視してよい、と仮に言われたとしても、影響範囲が実際に使用しているテンプレートに及んでいれば、結局そちらの修正対応というものが降りかかってくるのは見えている。だったら最初から調査して影響が出ないようにしておく、というのが仕事の段取りというものであろう。

そうなると、個人的な依頼だから多少割り引くとしても、「1日で済む量ではない」の対応の仕方の違い、出しかない。つまりはバッファを付けておくかつけないか、位の差。せいぜいそれくらい。でこれくらいの金額かなぁ、とこちらの見積もりを提示したところ、ご予算はそれの20%程度しかないとのこと。
であれば、これは仕事としては請けられない。お友達だからやってあげればいいじゃないかというむきもあるかもしれないが、プロの仕事を20%の価格(それも通常存在するバッファを削っているので,実質的には15%程度)で提供してくれ,という依頼なのでやはり請けてはいけないんじゃないか,という気分の方が大きい。お友達価格というのは,予算に応じて何でもやってあげるということではない。

ことは、お友達価格というだけではない。

仕事であっても,「知見を借りたい」という要望が多々あるが,その多くは「無償で知見を借りたい。後ろで作業発生したら作業費は払うから」というパターン。これは違うんじゃないだろうか。作業費を払うのは当然だけど,それは文字通り作業に対しての費用であって,その前段の「知見」なるものがなぜ無料になるのだろうか。むしろ知見の方が,よっぽど費用を払われるべきものではないか。作業が無価値ということではなくて,知見は10人いれば10人の知見が存在するが,作業であれば10人いても(やりかたはそれぞれにしても)最終的に10人が異なる成果物を作ってしまってはいけないという点で取り換えがきく。もちろん10人が10人同じこと言うよね,というレベルで意見を求められることもあるのだけど,そもそも知見を借りたいなんて言う時に,誰に聞いても同じことは期待されていない(同じこと言うは結果の問題)ので,やはり独自性が前提となる。なんだからやはり知見の方が費用が発生してしかるべきことではなかろうか。

相談はタダじゃない。